「アクティオ・ワイルドカード」で挑んだ富田/溝端組の想い

「アクティオ・ワイルドカード」で挑んだ富田/溝端組の想い

「アクティオ杯ビーチインカレ」の王者が、トップチームに挑戦する「アクティオ・ワイルドカード」。「マイナビジャパンツアー2023第6戦都城大会 第24回ビーチバレー霧島酒造オープン」で実施され、男子は富田昂馬(日本体育大3年)/溝端拓真(日本体育大1年)組が出場した。

幼い頃からバレーボールに打ち込んできた富田は、日本最高峰の「マイナビジャパンツアー」を「『V1リーグ(バレーボールの国内トップリーグ)』のような舞台」と表現する。

 

「相手は格上ばかりだけど、2人で話し合ってとにかく怖じけづかないこと。持っている力をすべて出せるよう試合に挑みたい」

 

そう意気込む溝端、富田ともに「マイナビジャパンツアー」の本選出場は初めて。自分たちの持ち味をどこまで発揮できるのか。9月1日(金)、宮崎県都城市・霧島ファクトリーガーデンにおいて戦いの火蓋が切って落とされた。

▲日本体育大1年の溝端

 

初戦の相手は、「マイナビジャパンツアー2023」前半期チャンピオンチームの長谷川徳海/倉坂正人組。富田は「自分たちがトップチームに対して、どこまで戦えるか知ることができるチャンス」と捉えていた。そんな申し分ない相手に、富田/溝端組は自分たちの武器であるフルスイングによる攻撃を序盤から仕掛けていく。

「1試合目は、たとえブロックに捕まってもアウトになってもいいから、打ち切っていきたかった」と溝端。その気持ちがうまく作用し、試合序盤は対等にゲームを進めることができた。しかし中盤以降になると、渾身のスパイクも長谷川/倉坂組にいとも簡単に拾われ始めた。第1セットは14-21、第2セットは8-21と突破口を開けずに終わり、ストレート負けを喫した。

 

 反撃の糸口を掴めなかった富田/溝端組だったが、それでも肩を落とさなかった。

「足りなかったのは、パス、トスの質だったと思う。長谷川/倉坂組はもう一段階上で、パス、トスが全然乱れていなかった。自分たちがそこを崩すことができなかった。だけど、次の試合につながるような戦い方はできたと思う。もっとパフォーマンスを上げていきたい」(富田)

 トップチームとの差を感じ取り、前を向いた。

▲Vリーグ選手を兄に持つ富田

 

 プール戦2試合目は、進藤諒(トヨタ自動車)/小田涼太(ハウスコム)組と対戦。小田は、日本体育大の先輩であり、2年前アクティオ・ワイルドカードの初代チームとして出場。ビーチインカレ優勝を機に将来を切り開いてきた偉大なる先輩の胸を借りることになった。

 

 少しずつマイナビジャパンツアーの舞台に馴れてきた富田/溝端組は、ディフェンス面でチームワークを発揮し始める。大学No.1ブロッカー・溝端が、ネット際でプレッシャーをかけていき、相手がブロックを避けてきたスパイクに対して富田がディグを成功させる。そんな場面が随所に光った富田/溝端組は、第1セット、第2セットともに一進一退の攻防を展開。しかし、終盤において決定打を欠いてしまう。

 ディグを成功させても、その先の攻撃までいいカタチでつなげられない。甘い攻撃は、プロには通用しない。富田/溝端組は、0-2(19-21,19-21)と接戦を落とした。

▲思い切りのよさを発揮した富田/溝端組

 

 プール戦敗退となった富田/溝端組。しかし、戦いを終えた2人の表情は「思いっきりやった結果」だと清々しかった。富田は言う。

「V1リーグの選手たちと戦うということは、こういうものなんだと肌で感じた。改めて東レで活躍している兄(将馬)はすごいと思った。自分も、大学生の壁を越えてプロと戦える選手になりたい」。

 

溝端も「来年またこの舞台に戻って、最終日に残りたい」と語気を強めた。

「砂が深いところで練習を積み上げ、強くなるために練習環境を工夫していきたい。課題はたくんあるけれど、自分たちはもっともっといいチームになれると思う。格上の選手と試合をさせていただいたことで、モチベーションにつながる。本当にいい機会をいただきました」

 

 トップチームとの対戦は、上を志す者にとって自分たちの力を把握できる貴重な物差し。1年後、彼らはどんなふうに成長を遂げてビーチインカレを迎えるのだろうか。

▲観客からサインを求められる富田/溝端組