男子優勝・石島/髙橋組、女子優勝・長谷川/坂口組 マイナビジャパンツアー第3戦渋谷大会2日目

男子優勝・石島/髙橋組、女子優勝・長谷川/坂口組 マイナビジャパンツアー第3戦渋谷大会2日目

マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2023第3戦渋谷大会の2日目。1日目に、男女各8チームによる1回戦が行われ、2日目は勝ち上がった各4チームの準決勝、決勝が行われた。1日目は、異例の大型台風の影響により、午前中は強い雨に見舞われたが、2日目は早朝から晴天となった。マイナビジャパンツアーが初めて開催される東京・渋谷区立宮下公園(通称:MIYASHITA PARK)には、試合開始前から続々と人が集まってきた。

 

 女子準決勝に進出したのは、村上めぐみ/藤井桜子(ともに株式会社立飛ホールディングス)組 対 松本恋/穏(ともにフリー)組、長谷川暁子(NTTコムウェア株式会社)/坂口由里香(トーヨーメタル株式会社)組 対 山田紗也香/西堀健実(ともにトヨタ自動車株式会社)組。男子は、石島雄介(トヨタ自動車株式会社)/髙橋巧(ANAあきんど株式会社)組 対 庄司憲右(ハウスコム株式会社)/池田隼平(株式会社カブト)組、黒川魁/福嶋晃介(ともにNTTコムウェア株式会社)組 対 長谷川徳海/倉坂正人(ともにフリー)組。

 

 1回戦第1試合、前日の土砂降りの中フルセットで勝ち上がってきた村上/藤井組と、僅差の試合を制して勝ち上がってきた松本恋/穏組は、苦しい展開を潜り抜けてきたペア同士の対決であり、2日目の準決勝第1試合から白熱した戦いが予想された。

 試合は序盤から村上/藤井組がリードを広げる展開で始まり、その後、松本穏の強打や恋のサービスエースなどで猛追するが、1セット目は村上/藤井組が21-17で勝利した。第2セットを勝ち取ったのは、松本組。ラリーが続く中で効果的なショットを放つなど、軟硬織り交ぜた攻撃を駆使した結果だ。最終的にフルセットを制したのは、村上/藤井組。1点を競い合う拮抗した展開の中、村上の松本恋を狙いすましたサービスエースで3連続得点を挙げ、勝利を引き寄せた。その勢いのまま相手の間をつくショットや強打も繰り広げ、15-12で決勝進出を決めた。

サーブを打つ藤井

 

女子準決勝、長谷川/坂口組と山田/西堀組では、1セット、2セットともに21-14で勝利した長谷川/坂口組が決勝戦の切符を手にした。

 

 一方、男子準決勝で激しい攻防が繰り広げられたのは、石島/髙橋組と庄司/池田組との対戦だ。髙橋は上場雄也(松戸レガロ)とペアを組み、マイナビジャパンツアー立川立飛大会で準優勝、同平塚大会で優勝している。しかし、来年パリ五輪を視野に国際大会出場条件を考慮し、今大会から改めて石島とペアを組むこととなった。石島は、国内屈指のブロッカーとの評価が高く、今大会でも1回戦で対戦した西村晃一(WINDS)に「このブロックをやられたら勝てないと思うほど完璧なブロックを展開してきた」と言わしめる。今大会の準決勝、庄司/池田組との対戦でも石島のブロックが炸裂した。

 第1セット序盤から池田の強打をシャットし、その脅威を見せつける。石島はブロックだけでなく、198cmの長身から繰り出す強烈なスパイクや相手チームのブロックの上からのショットなどで攻撃を重ねていく。一方で、庄司/池田組の追い上げにも目を見張るものがあった。髙橋にサーブを集め池田のブロックでサイドアウトを切らせないプレーが随所に見られ、固い守りから庄司のスパイクにつなげた。しかし、第1セットはデュースにもつれて27-25、第2セットは21-18で石島/髙橋組が決勝進出を決めた。試合後、庄司/池田は口を揃えて「国内最強のブロッカーとレシーバーのペア」と、石島/髙橋を評した。

ブロックを決める石島

 

 男子準決勝、黒川/福嶋組 対 長谷川/倉坂組の対戦では、長谷川のブロックが勝負を決した。相手の強打だけでなく、コースを打ち分ける軟打に対しても片腕で対応するスキルを魅せた。第1セットも黒川の強打を長谷川が仕留めて21-17で制し、続く第2セットは21-12と大差をつけて勝利した。

 

 正午には気温は27度近くまで上がり選手たちの消耗も激しくなったが、決勝戦が行われる14時過ぎには天候は曇りとなった。長谷川/坂口組 対 村上/藤井組の女子決勝戦は、終始長谷川/坂口組のリードで試合が展開した。村上に徹底的にサーブを送り続け、村上/藤井組の攻撃を封じ込めた。村上のサービスエースや的確なショットなどの変化で長谷川/坂口組のミスを誘い追い上げを見せる場面もあったが、第1、第2セットともに21-12で長谷川/坂口組が大差をつけて勝利を飾った。

「準決勝と決勝で、私が前でプレーする時間を増やしたことで得点につながりました」(坂口)。いつもは、後ろに下がってレシーバーとしての役割に徹している坂口が、決勝戦第2セット終盤にブロックを決めている。「相手チームが、その戦い方がとても嫌そうだと感じられたので、続けました」(長谷川)。試合中のコミュニケーションがしっかり取れていたため、長谷川、坂口のどちらが前に出ても、後ろにいるパートナーとの連携が機能した。これが、長谷川/坂口組の勝因となった。

ブロックを交わす長谷川(暁)

 

 マイナビジャパンツアー渋谷大会を締めくくる石島/髙橋組 対 長谷川/倉坂組による男子決勝戦は15時15分に開始した。石島と長谷川、ともに日本を代表するブロッカー同士の戦いは、コートの周りにびっしりと集まった観客の大きな注目ポイントになったはずだ。

 しかし、決勝戦で繰り広げられたのは、単純なブロック対決ではなかった。2人の間に突き刺さるサービスエース、強打に飛び込むディグ、逆サイドへと放たれるロングショットを上げる固いレシーブの数々。4人が拾いまくって、そこから攻撃につなげる展開は、ビーチバレーの醍醐味そのものである。

第1セットは長谷川/倉坂組が21-15で、第2セットは石島/髙橋組が21-17でもぎ取り、ファイナルセットを迎えた。1点を争う激しい攻防の中、石島のスパイクがアウトになり13-13同点に。石島/髙橋組はタイムアウトを要求し、残りの2点をどう戦うかを確認する。タイム明け、長谷川のサーブは髙橋を狙うが、手堅いレセプションから石島のトスへとつなげると、髙橋はレフトに大きく回ってスパイクを叩き込んだ。14-13、マッチポイント。その髙橋が後ろに下がって最後のサーブを打った。ラリーの末、再びレフトに回り込んだ髙橋がストレートにショットを決めて、長谷川/倉坂組を退けたのだった。

「タイムアウト後の展開で髙橋にサーブを出した後、確実に髙橋がスパイクを決めてくると読んでブロックの準備をしていたが、まさかレフトに回るとは想定していなかった。あの1点こそ、石島/髙橋の作戦勝ちだった」(長谷川)。

喜びを爆発させる石島

 

 渋谷に集まった多くの観客の前で繰り広げられた男子決勝戦の激闘は、ビーチバレーをライブで見たことがなかった人の心にも記憶として刻まれることだろう。マイナビジャパンツアー渋谷大会は、ビーチバレーの魅力と迫力を発信する絶好の大会となったはずだ。

 

そして、今大会は渋谷開催ということもありスクランブル交差点において複数のビジョンジャックを行い街全体にビーチバレーボールが波及した。

スクランブル交差点における複数ビジョンジャック

 

アーバンスポーツのメッカとして渋谷にビーチバレーボールが根付くのもそう遠くない未来かもしれない。