PLAYERS INTERVIEW ⑳ 黒川魁

PLAYERS INTERVIEW ⑳ 黒川魁

昨季、マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2022(以下、マイナビジャパンツアー)第2戦大洗大会で初優勝、ほかにも準優勝を1度、3位は2度獲得するなど大きな飛躍を遂げた黒川魁。昨季の結果を振り返りながら、今季はプロ7年目の中堅となる現状、そして今後について聞いた

 

──昨季は振り返るとどのようなシーズンでしたか?

黒川 マイナビジャパンツアーで優勝し、ファイナル グランフロント大阪大会にも出場できてとてもよかったのですが、もっともっと勝ちたいという気持ちがあります。表彰台に上ることも多く、飛躍の年になりましたが、優勝はまだ1度。これまでの僕からすれば、大きくレベルアップしたと思いますが、そこで満足せずに、何度でも1位になりたいです。

 

第2戦大洗大会でうれしい初優勝を飾った

 

──飛躍の要因は何だったのでしょうか?

黒川 まずは国内トップクラスのいい環境で選手活動をさせてもらっていることです。会社には遠征や合宿に行かせてもらい、もう5年くらい一緒にやっている平野(将弘)コーチや長谷川(悟理)トレーナーがいて、つらい練習を頑張り続けられる環境がありました。以前は、試合中、形勢が不利になると、どんどん視野が狭くなってくる感覚があったのですが、今は1セット取られても「あと2セットある」と思えるほどに心の余裕が生まれてきました。それはコーチやトレーナーと練習を積み重ねることで、技術が身に付き、何があっても何とかできるという自信がついたからだと思います。

 それと、もっとも大きいと思うのは同じ所属先の(福嶋)晃介とペアを固定して、年間を通じて戦えたことです。(※第3戦 平塚大会 ガラナ・アンタルチカ杯は福嶋が世界大学選手権出場のため上場雄也と出場し3位)これまでは、まだ僕の技術が低くて、固定してペアを組んでもらえることがなかったのですが、この1年間、晃介と一緒にチームとしていろいろなことを積み重ねることで、1人のときとは違うステップアップができたと思います。

 

今季プロ1年目の福嶋と組み飛躍を遂げた

 

──ペアを固定できたことでどういった部分がよくなりましたか?

黒川 例えば試合に対する準備です。試合の何分前から動き始めて、どのような準備をするかということもチームで決められるので、やりやすかったです。また一緒に練習をしている時間が長くなるほど、試合で「相手のスパイクに対して、(福嶋がブロックで)このコースは締めてくれるだろう」など、ペアの動きや考えていることが分かるようになります。試合では練習で積み重ねたものをすべて出し切るということが大前提なのですが、ペアが流動的だと、相手の考えていることがすぐにわかる訳ではないので、不安もあります。1年間ペアを固定して積み重ねられたものが結果につながったのだと思っています。

 

──福嶋選手とのコミュニケーションはいかがですか?

黒川 晃介は思ったことをストレートに言ってくれるタイプです。僕はどちらかというと受け皿になるほうが得意なタイプなので、バランスがちょうどよく、とてもやりやすかったです。最初からうまくいったわけではないですが、コーチも含めて、徐々によくなっていったと思います。実際にうまくいかなかった試合ではお互いあまり話さなくなり、よい試合ではよく話すことができていました。役割分担としては、晃介が伸び伸びプレーすることでサービスエースを取ったり、ブロックを止めたりできればいちばん勝てると思っていたので、(自分は)目立たないところでレシーブを上げて点を作っていきたいと思っていました。新シーズンも晃介と組む予定です。

 

──黒川選手は自分のことをどのような選手だと思いますか?

黒川 例えば攻撃力、守備力などを5段階で表示したら、僕は全部3になるような選手だと思います。なので、僕は頑張ってどれかを5にするか、すべて4や4.5に引き上げていかなければいけないと思っています。プレーの中ではショットを拾うことが得意です。昨季はペアを固定したことで、コミュニケーションを取りながら、どういった攻撃をしてくるのか予測して取捨選択できたので、より拾うことができたと思います。また昨季は、そのあとの攻撃についても国内の試合ではよい数字を残せたと思います。

 

サーブレシーブ、ディグで試合を支えた

 

──新シーズンに向けて具体的には何を強化したいですか?

黒川 ブレイク力を上げたいと思っています。僕たちはサイドアウトを切り合い、21-19で勝つような展開は得意なのですが、ワンサイドゲームにすることがなかなかできません。国内で見ても攻撃力がより高い選手はたくさんいるので、そういった相手に対していかにブレイクを取っていくのかが大切になります。そのためにサーブなどブレイクにつなげるためのプレーをレベルアップしていきたいです。

 

──「積み重ねる」という言葉が何度か出てきました。ケガもありましたが、ついに結果に結びつきました

黒川 ここまでくるのにとても時間がかかりました。東京2020オリンピックの1年前、予選が始まる2019年にアキレス腱を切る大ケガをしました。そのときは「もうやめようかな」と思ったのですが、ケガをした日に当時の上司が「お前は絶対に復活してまた試合に出るんだ」と言ってくれました。パートナーはいませんでしたが、平野コーチがいて、長谷川トレーナーがいて、練習環境もあって、村上斉さんや清水啓輔さんやディラン(弟の黒川寛輝ディラン)や家族がいて、近くにいた人たちがみんな助けてくれました。だから、頑張れたのだと思います。

 

大洗大会優勝後の一場面。チームや弟の黒川寛輝ディランとともに喜んだ

 

──今年はどのような目標がありますか?

黒川 国内ではビーチバレージャパンとマイナビジャパンツアーのファイナルで優勝することが目標です。やはりこの2つは僕の中で大きな大会なので、そういうビッグトーナメントで勝てる力をつけたいです。今年は周りが僕らを見る目も変わって、相手もちゃんと準備してくると思います。その中で勝つことは、昨季より難しいと思っていますが、試合を楽しみにしています。それとおこがましいですけど、コンチネンタルカップの出場選手争いにも絡んでいけるようになりたいです。今の状況で選んでもらえるのか、どういう選び方をするのかは分からないですが、絡んでいきたいです。

 昨季終盤はビーチプロツアーに3大会出場し、FUTUREのスービック湾大会(フィリピン)でプール戦を抜けてトーナメント進出、CHALLENGEのトーキー大会(オーストラリア)では予選で1勝と1年目にしてはよかったと思います。ただ、海外の選手には、僕らが得意としているブレイクの取り方では点を取らせてもらえませんでした。相手は強打で押してくるので、それを止めるか、拾って点を取る、サーブで崩してショットを打たせるようにするなどパターンを増やしたいです。

 

──今年だけでなく、もう少し長い目で見て、どのような選手になりたいですか?

黒川 白鳥(勝浩)さんのような絶対的な技術を持っていて、勝ち方を知っている選手になりたいです。昨季大きく成長できたのは、勝ってたくさん試合ができたからだと思うんですね。プール戦に勝って、準決勝に勝って、決勝がある。ポイントを取って、他の大会に出る。どれだけ練習しても、結局試合で勝たないと強くなっていかないと最近思うようになりました。だからそういう選手になるためにも、たくさん試合に出て、たくさん勝ちたいです。

 

黒川 魁(くろかわ・かい)

NTTコムウェア株式会社所属

京都府出身/1994年11月20日生まれ/28歳/身長184cm/血液型B/右利き