PLAYERS INTERVIEW 14  溝江明香

PLAYERS INTERVIEW 14
溝江明香

19歳で国内ツアー最年少優勝を果たし、大学2年生から日本代表として日の丸を背負ってきた溝江明香(トヨタ自動車)。オリンピックへの3度目の挑戦を経て、自身と向き合った結果、新たな答えを導き出したという。新パートナー・石井美樹とともに挑んだ初陣や今後のビジョンについて聞いた。

 

──2021年はどんな1年だったでしょうか?

「今年はオリンピックイヤーということもあり、色々と難しいシーズンでした。前半はコロナ禍になって初めてワールドツアーに参戦して、隔離も経験して調整が非常に大変でした。5月の代表決定戦は、準備を進めていく中でそれまで感じたことがないほど精神状態が張り詰めるなど、独特の緊張感がありました」

 

──代表決定戦では、西堀(健実・トヨタ自動車)選手とも4年ぶりにペアを再結成しました。溝江選手にとって「再結成」して大きな大会に挑む、というのは初めての経験でしたね

「パートナーが変わると全然違ったチームになるのが、ビーチバレーボールの競技特性です。1人のパートナーと長く組んでわかることもあるし、合わなくなることもある。そういうのを含め、タケさん(西堀選手の愛称)と一緒に戦うということがそのときの自分にとってベストな選択でした。『再結成』というとらえ方よりも、勝つための選択としてそれがたまたま以前ペアを組んでいた選手でした」

 

代表決定戦では、西堀健実選手(トヨタ自動車)とペアを組んだ

 

──代表決定戦では、試合後に選手たちどうしが泣きながら抱き合って健闘をたたえている姿が印象的でした

「そうですね。各選手、いろいろな思いがあって『負けたら引退』と決めていた選手もいたと思います。他の選手の思いはわかりませんが、私自身はあの戦いに向かって、全力を出しきることができたから、自然にああいう行動になったのかなと思いました」

 

──オリンピック出場はかないませんでしたが、代表決定戦後はどんなことに軸を置いて活動されていたのでしょうか?

「試合がしばらくなかったので体は少し動かしつつ、何かに向かってというよりは、自分と向き合う時間を過ごしました。この先競技を続けるか、何を目標にするのか。競技以外では何をしたいのか…、自分自身についていろいろ考えました」

 

──競技を続けないという選択肢も考えたということですか?

「はい。正直、迷いはありました。オリンピック後にマイナビジャパンツアーが始まってからも、なかなか結論は出なかったのですが…。いつも応援してくれている方のためにも試合には出て、結果を残していきたいという思いはありました」

 

──現役続行は、いつごろ、どんなことがきっかけで決意されたのでしょうか?

「東京2020オリンピックが要素の一つだったと思います。試合の配信を見ていて、あのスタジアムに立ちたかったという気持ちと、自分はこれからあのコートに立って勝てるほどの力をつけていけるのか、努力していけるのか。そんなことを自問自答しながら素の自分のままで見ていました。そういった心境の中で国内ツアーに出場していたのですが、そこで自分が不安に感じていたものを少しずつ消化していくことができました。今までは結果が出ないと申し訳ないと思ったり、罪悪感を感じたり、ときには人の目を気にしてしまうこともありました。でもこれからは結果にとらわれず、自分らしく目標に向かって努力して成長していきたいと思ったんです。もう1回、『新しい自分』になって、世界の大会でトッププレーヤーになれるように進んでいこうと決めました」

 

──トップにいけばいくほど、応援してくれる方も増えますし、背負うものも多くなりますよね

「日本国内ではもちろん、世界でも勝ち続けなきゃいけない、負けたら申し訳ない、とずっと思い込んでいた部分がありました。もちろん、結果を残していくことは使命なのですが、周りがどれぐらい自分に期待しているかは私自身では分からないことなのに、自意識過剰になってしまった部分もありました。『新しい自分』は、自分のことを好きでいられるようでありたいと思っています」

改めて感じた自分のストロングポイント

 

──自分と向き合い考え抜いた結果、新たな気づきが生まれたわけですね。そして10月末からは新パートナー、石井美樹選手との新チームがスタートしました

「かつて日本代表として一緒に戦った仲間でもありますし、東京2020オリンピック後も連絡を取り合っていました。今後のことや自分の価値観、ビーチバレーボールに対する考え方など話していく中、やっていきたいことや思ったことがお互いに近かったことで、ペアを組むことになりました」

 

──溝江選手から見た石井選手の魅力とは?

「勝負に対して、妥協しないところです。貪欲というか、シビアというか、その点ではずば抜けているなと思います」

 

──ワールドツアーイタペマ大会では9位タイ、アジア選手権では準優勝という結果でした。手応えはありましたか?

「順位だけを見れば、悪くはなかったと思います。4スター大会での9位タイもアジア選手権の準優勝も私自身初めて。オリンピック後ということもあって強豪チームが不在というラッキーな面はありましたが、そのチャンスを取りこぼさず結果を残せたことはよかったです。今は新しいチームになって、今までやってきた技術と違うことに取り組んでいるのですが、個人の出来としてはまだまだですね。試合が続くとやっぱり疲労が重なってきます。そうすると今までの癖が出てしまったり、調子に波が出てしまうのは課題だなと強く感じました。今は新しいことを習得するのに手いっぱいという感じです」

 

──新たなパートナーとの挑戦ですね

「そうですね。実際に取り組んでみて、『なるほど、美樹さんはこうやってアプローチしているんだな』と新しい発見の毎日です。初心者のつもりですべてを吸収しています。求められることが高いので、分からないことがあれば、そのように伝えますし、実際にプレーを見せてもらうこともあります。私たちの目標であるパリオリンピックまで時間はないので、そのあたりはお互いにしっかりコミュニケーションをとっていこうと心掛けています」

 

──ビーチバレーボールを始めたころの溝江選手はしっかりボールが叩けて攻撃力の高い新人という印象でした。11年目を迎えた今、ご自身が思うストロングポイントは?

「ベテランになってきた分、うまさを出していこうと近年は思っていたのですが、やっぱり自分のストロングポイントは強打だなと思います。ワールドツアーの決勝トーナメント2回戦、ブラジルのタリータ(TALITA DA ROCHA ANTUNES)/レベッカ(REBECCA CAVALCANTI BARBOSA SILVA)組(イタペマ大会5位)との試合は『強打しか打たない』と決めて挑みました。するとレシーバーのレベッカが私の強打をはじいてしまったり、ブロッカーのタリータもフェイクから下がるときに捕れなかったり。トップの選手がはじいてしまうほどのスパイクが打てるということは、それを武器として組み立てていいんだなと自信になりました」

 

ストロングポイントの強打にさらに磨きをかけていく

 

──経験を重ねてきた結果、最初に立ち返ったわけですね

「始めたころの強打は『感覚』で打っていたのですが、効果的な強打をどんな状況でも打ち続けるにはフィジカルに加えて、ヒットポイントや相手にかける負荷などかなり細かい技術が必要です。これからはどんな状況でも変わらない再現性の高い強打を打てる選手を目指していきます」

 

──最後に2022年の抱負をお願いします

「2022年は、アジア競技大会(中国・杭州)や世界選手権(イタリア・ローマ)の開催が予定されているので、そこで上位を狙っていきたいです。そして『新しい自分』を確立して、自分らしく頑張っていきたいと思います」