10回目の節目を迎えた「川崎市長杯」。村上/倉坂組、西堀/草野組が優勝。

10回目の節目を迎えた「川崎市長杯」。
村上/倉坂組、西堀/草野組が優勝。

今年で10回目を迎えた「第10回ビーチバレー川崎市長杯」が10月6日(土)、7日(日)、神奈川県川崎市の川崎マリエンビーチバレーコートで開催された。

川崎市杯は昨年同様、ジャパンビーチバレーボールツアーのカテゴリーではなく、日本ビーチバレーボール連盟主催の大会として開催。10月9日から中国でワールドツアーが開催されるため、一部のトップ選手は不在であったが、若手選手や新しいペアが躍動した大会となった。

決勝戦に駒を進めたのは、ともに日本代表メンバーとして活動してきた村上斉(ADI.G)/倉坂正人(三菱オートリース)組と庄司憲右(愛媛県競技力向上対策本部/湘南ベルマーレ)/池田隼平(フリー)組の対決となった。


男子決勝

今シーズン、第7戦若狭おばま大会で優勝し覚醒した庄司/池田組は、準決勝で優勝候補の一角に挙げられていた西村晃一(東京ヴェルディWINDS)/柴田大助(丸紅建材リース)組をストレートで撃破。一方、村上/倉坂組は今シーズン2度の準優勝、その実力通り、今大会も取りこぼしなく勝ち上がってきた。

「ともに練習しているので手の内を知り尽くしている相手」と庄司が振り返るように第1セット序盤は両者の意地が激突。一進一退の攻防戦が繰り広げられる。だが、流れを引き寄せたのは、村上/倉坂組だった。村上が池田の強打をブロックし堅いディフェンスを展開。第1セットは村上/倉坂組が21-12と先取した。

第2セットも村上のブロックが好調。池田の攻撃にぴたりとタイミング合わせたシャットアウトが飛び出し、村上/倉坂組は完全に主導権を握っていく。「シーズン中盤はよかったが、終盤は勝つことができなかった。それでも我慢し続けてこの大会でまた調子を上げていくことができたのはよかったが、まだまだ波がある」と庄司。その言葉どおり、第2セットも敵の勢いを止められず。村上/倉坂組が21-10と制し、勝利した。


今シーズン3回目の決勝進出を果たした池田

村上/倉坂組は今シーズン、初めて優勝というタイトルを手にした。また、ビーチバレーボールクラブとして川崎に根を張る「KBSC」のトップアスリートとして所属する村上は、ホーム川崎で初めて優勝を味わった。

今では強化別拠点として「ビーチバレーボールナショナルトレーニングセンター」となり、たくさんのトップ選手が練習している川崎マリエン。しかし、村上が川崎で活動し始めた2013年頃は練習する選手も少なかったと振り返る。
「当時のコーチだった牛尾正和さんと2人きりで練習していた時もあった。苦しい時代を乗り越えて、結果を出すことができた。ようやくホームの川崎でタイトルがとれて本当にうれしい」と喜びを語った。


今大会価値ある3位となった平良/岩下組

今大会、男子において、シード1の清水啓輔(ひまわり福祉会)/長谷川徳海(愛媛県競技力向上対策本部)組が敗れる波乱があった。そこで大金星をあげたのは、9月に開催された「JBVサテライト第3戦越谷大会」で優勝した岩下雄人(湘南ベルマーレ/日本大)/平良伸晃(D-FORU)組だった。

レシーバーの平良は昨年のJBVサテライトでも優勝経験があり、実績のある選手。一方、ブロッカーの岩下は、今から4年前、高校3年の時に彗星のごとく現れた未完の大器。身長186cm、床での垂直飛び83cm、最高到達点335cmという身体能力を持ち、将来を期待されて当時U21の代表とにも選出されていた。

しかし日本大へ入学とともに夏季だけ大学選手権の練習に参加するので、3年間はインドアに専念してきた。現在は大学4年となり、インドアを引退し再びビーチへ戻ってきた。
幸先のいいリスタートを切った岩下は「卒業後はビーチバレーボールをやっていきたい。そのために土台を固めていきたいし、そういう意味で上でやっていくことを見据えた時に手ごたえのある大会となった」と収穫を述べた。


女子決勝、西堀/草野vs沢目/坂本

女子決勝は、今シーズン4勝(ジャパンツアー第5戦行橋大会、第9戦都城大会、ビーチバレージャパン、ビーチバレージャパンレディース)をあげている西堀健実(トヨタ自動車)/草野歩(パソナ)組と、今シーズン初の決勝進出を果たした坂本実優(医療法人社団明朋会増田外科) /沢目繭(新興和製薬株式会社/湘南ベルマーレサテライト)組の対戦となった。

今シーズンの女子の勢力図をおさらいしてみると、これまで実績を残してきた石井美樹(湘南ベルマーレ)/村上めぐみ(オーイング)組、西堀/草野組がチカラを誇示。2強以下のチームとの差は歴然という状況は否めなかった。
そんな中、若手の台頭である沢目/坂本組は、今大会の準決勝で第4戦南あわじ大会で優勝した藤井桜子(市進ホールディングス)/宮川紗麻亜(フリー)組を下し、初の決勝進出を決めた。ベテランに一矢報いることができるか、注目が集まった。

しかし、第1セット序盤からベテラン組のサーブが走る。グッドサイド(風下側)から5-0と得点を量産した西堀/草野組は、第1セット21-14と簡単に先取した。第2セットは沢目/坂本組のサーブが草野を襲う。
「風の状況を読み取れず、ミスをしてしまった。そこをタケ(西堀)さんに助けてもらった」と草野。先に19点までたどり着いた沢目/坂本組だったが、この状況でも決して慌てず崩れないのが西堀/草野組の強さだろう。
「今シーズンはデータを収集してそれを参考にしながら冷静に戦うことを意識してきた。国内最終戦でも実行できた」と西堀。終盤、草野の好レシーブからブレイクに成功すると第2セット21-19と連取し、優勝を飾った。

今年10回目の節目を迎えた「川崎市長杯」。表彰式に出席した福田紀彦川崎市長は「『スポーツの街・川崎』を掲げている市にとって、川崎マリエンが強化別拠点の施設になっているのは、大きな誇り。ここで活動しているチームが東京オリンピックで活躍し、たくさんの方々に関心を持っていただきたい」と述べた。

写真/オフィスプライヤ