石井/溝江組が銀メダルを獲得。「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」総括

石井/溝江組が銀メダルを獲得。「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」総括

「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」は1年の延期の末、中国・杭州で9月23日から10月8日の日程で行われている。

 アジア競技大会として7回目の開催となるビーチバレーボール競技には、OCA(アジアオリンピック評議会)に加盟する各国から、男子は16カ国から27チーム、女子は11カ国から20チームが参加した。

 ビーチバレーボール競技の会場は、杭州市内ではなく杭州から南東へ250キロ離れた「寧波半辺山ビーチバレーボールセンター(浙江省寧波市)」。日程も翌週からメキシコで世界選手権が行われるため、本大会開幕前の9月19日から始まり、28日閉幕と変則的な形でのトーナメントとなった。

 

 日本女子代表は、国内では世界ランキングトップの石井美樹(湘南ベルマーレ)/溝江明香(トヨタ自動車)組、続く2位の長谷川暁子(NTTコムウェア)/坂口由里香(トーヨーメタル)組の2チームが出場。しかし、男子はアジアでのランキング低下により25年ぶりに出場は1チームのみ。髙橋巧(ANAあきんど)/上場雄也(松戸レガロ)組が男子代表としてプレーした。

 

 女子予選プール戦は4組、1組5チームに分かれ19日から22日まで行われた。第3シードの溝江/石井組は、4勝0敗でプール戦をトップ通過。長谷川/坂口組も予選プール、3勝1敗の2位で通過した。

 24日から始まった決勝トーナメント、長谷川/坂口組はラウンド16ではカザフスタンを相手に快勝したが、準々決勝の相手は第1シードのXue/Xia組(中国)。本大会に出場しているチームではトップの世界ランキングを持つ。

特にXueは2008年北京五輪の銅メダリストで、計3度のオリンピックの出場経験のある大ベテラン。XiaもXueとともに東京五輪に出場し、アジア大会は個人として2連覇中である。

 

 第1セットから、やはり試合の主導権を相手に握られた長谷川/坂口組は、リズムをつかめないままゲームが進んでしまう。武器としているチームの機動力やディフェンス力で得点を取ることができず、第1セットを16-21で落とすと、第2セットも後手にまわり、試合のリズムに対応できなかった。
 191cmのXueを相手に果敢にブロックに跳ぶなど、流れの切り替えを図ったが、それも叶わず第2セットも12-21で落とし、セットカウント0-2で敗れた。

 

長谷川は「プレーは悪くはなかったと思うが、相手には高さがある。もっと自分たちから仕掛けていかないといけなかった」と言い、坂口も「パストスが合わないなどリズムがよくなかった。ディフェンスから点数へつなげられなかった」と話した。

 

 長谷川/坂口組とは反対のブラケットを準決勝まで順当に勝ち上がった石井/溝江組は、近年成長著しいタイのNaraphornrapat/Kongphopsarutawadee組と決勝進出を賭け対戦。先に第1セットを取られたものの、第2セットは奪い返した。最終セットも実力通りの拮抗したゲームになったが、最後は石井/溝江組が競り勝った。

 

 そして決勝の相手は、そのXue/Xia組。石井/溝江組は、長谷川/坂口組から中国チームの狙いどころなど、情報を入手し、万全の体制でゴールドメダルマッチに臨んだが、壁は高かった。

 

 トーナメントをここまで勝ち上がった要因のひとつになっていたサービス、スパイクコースを限定させたディフェンスも容易には通用しなかった。ショットでの攻撃やブロックフェイクも難なく跳ね返され、高さのある強打を中国チームに打たれてしまう。リズムをつかめないまま、ミスも増えていき、第1セット11-21、第2セット13-21とセットカウント0-2、実力以上の差をつけられての敗戦となった。

 

 

 ただし、世界のトップチームに対する敗戦も、2個目のシルバーメダルを獲得した石井は「決勝戦は悔しいですが、トーナメントを通じて、持ち味であるサービスなど通用した部分も多かった」と話す。ゲームでは常に狙われ、本調子ではなかった溝江は「いつもと異なる雰囲気の緊張感はあった。それでも戦い抜いてメダルにつながったことは周りに感謝したい」と気持ちを示した。

 

 男子の高橋/上場組は全8 組、1組3~4チームに分かれた予選プール戦を1勝1敗で通過した。24日に行われた決勝トーナメント、ラウンド16に進んだが、イランのSalemiinjehboroun/Shoukati組にセットカウント1-2で敗れた。

 

 常時チームを組んでいるペアではないため、試合ごとに調子を上げようとしてきた髙橋/上場組。第1セットを常に先行を許したまま16-21で取られたが、第2セットはシーソーゲームを制して21-18で奪取。試合の流れは日本チームに傾いたと思われたが、古豪であるイランチームの集中力が一気に高まった。最終セットは一方的なゲームになってしまい、6-15で落とした。

 

 上場は「とても悔しい。相手チームの弱点を見つけて第2セットを取れたのだが、イランの集中力がすごかった」と言い、髙橋も「サーブで緩急をつけて得点は取れたが、最終セットはこちらのミスもあって簡単に得点を与えてしまった」と敗因を話した。 

 

 女子の金メダルはXue/Xia組。3位にはWang/Dong組が入った。Xiaは個人的には3連覇、Xueは2010年以来のゴールドメダルを獲得した。

 

 男子優勝は、カタールのCherif/Ahmed組で前回大会に続く連覇。アジアのナンバーワン、東京五輪銅メダリストの実力をまざまざと見せつけた。準優勝は中国のHalikejiang/Wu組、3位にはカザフスタンのBogatu/Yakovlev組が入った。

 

 ここ数年、中国チームの勢いが多少衰えていた時期もあったが、女子はXueが完全復帰し、再度、力をつけ直している。また男子のカザフスタン、イランなど古豪も、このアジア競技大会のようなビッグトーナメントになると一気に集中力を高めてくる術を知っている。今後、世界選手権、コンチネンタルカップ、パリ五輪など、大きなトーナメントが続く、普段のプロツアーと異なるスタイル、雰囲気の中、普段の実力をいかに出すかも問われることになるだろう。