男女ともにプール戦敗退    U21アジア選手権の収穫と課題

男女ともにプール戦敗退 U21アジア選手権の収穫と課題

「第5回U21ビーチバレーボールアジア選手権大会」(以下・U21アジア選手権)が2023年7月13日から16日、タイのローイエットで開催された。男子は22チーム、女子は17

チームが参戦。過去最高平均身長の代表チームとなった日本は、男子は各3チームのプール戦、女子は各4チームのプール戦に挑んだ。

 

 チームを率いるのは、白鳥歩氏。自身もアンダーカテゴリー代表として国際大会に出場した経験を持つ。2022年4月からアンダーカテゴリーの強化に携わってきた。しかし、昨年1年間は、日本のアンダーカテゴリーの強化の課題を洗い出し、整備する準備期間だった。

 

「昨年のU19の大会を見て、これは即席で勝てるレベルではないと痛感したのがきっかけです。まずは選手たちが継続してビーチバレーボールに取り組める環境を整えることを掲げて動いてきました。高体連さんや各地方の関係者さまのご協力もあり、少しずつ環境が整ってきました。今年を起点として3年間、継続して国際大会に出場する選手を輩出するのが目標です」

 

 そこで選考されたのが、男子の黒澤孝太(明治大2年)/溝端拓真(日本体育大学1年)組、稲垣喜一(ID学園高3年)/柏谷玲央(津工業高3年)組。女子の森川仁湖(今治精華高2年・171cn)/矢田和香(今治精華高2年・185cn)組だ。

 

 高校時代からビーチバレーボールに打ち込んできた黒澤と溝端を先輩チームに起き、そこにビーチバレーをはじめて間もない稲垣、柏谷、森川、矢田の4名を選出した。

 

 プール戦では上位2チームがトーナメント戦の切符を獲得できる。男子は1勝すれば、進出の可能性は十分あった。大会1日目(13日)は、稲垣喜一(ID学園高3年)/柏谷玲央(津工業高3年)組が午前と午後にプール戦2試合、戦うことになった。

 結果はタイ1に0-2と2敗を喫し、プール戦敗退が決まった。

 

 ともに高校3年生。初の代表戦は、稲垣、柏谷ともに日本と世界のギャップを感じたと話す。

決定打を欠いた柏谷は「日本では僕たちは大きいほうだけど、この大会では小さいほうだった。ブロックが高く意識して、うまくコースを打ち分けられなかった」と悔しさをにじませた。

稲垣も「振っていったスパイクも簡単に拾われた。海外の選手に負けないくらい筋肉量を増やして体力をつけて身体を大きくしていきたい」とリベンジを誓っていた。

 

    男子の黒澤孝太(明治大2年)/溝端拓真(日本体育大学1年)組は、タイ3に逆転負けを喫した。
 あと一歩のところで敗れた黒澤は、「悔しい試合ばかりで情けない。自分のセットが乱れてしまい、勝ちきれない弱さがあった」と唇をかんだ。

終始サーブで狙われていた溝端も「2試合目のレバノン戦は、暑さと蒸し暑さも影響したのか、2セット目終盤から足が動かなくなった。冷静さがなくなり、心の余裕もなくなっていた」と敗因を述べた。

 

なかなかサイドアウトが切れない状態が続き、打開策を開けない。レバノン戦の第2セット目以降は、一方的な展開に追い込まれた。

黒澤もインドアから戻ってきたばかり。溝端はこの大会で自身初めてレシーバーに挑戦したというハンディキャップもあったが、「練習期間を言い訳にはしたくない」(黒澤)と選手たちはこの結果を真摯に受け止めていた。

 女子は、今年初のインターハイ出場を手にした愛媛県・今治精華高の2年生ペアが選出された。「結果は度外視」と白鳥氏も話すように、ビーチバレーボールをはじめてまだ3ヵ月ほど、新人ほやほやのペアが国際大会デビューを果たした。

 

 そんな矢田と森川は、初戦のカザフスタン戦で1セットを奪ってみせた。狙われながらも粘りを見せた矢田は「カザフスタン戦は今までで一番いい試合ができた。数えられるくらいしか練習していないけど、アジアの大会でいいプレーが出た。手応えがあった」と胸をはった。

 

結果的にカザフスタン戦1-2(14-21/21-18/9-15)、続くベトナム戦0-2(6-21/9-21)、香港戦0-2(12-21/14-21)と3敗。プール戦敗退に終わったものの、3試合を通して矢田の背後で好レシーブを見せた森川は、大会前よりもビーチバレーボールへの意欲が増したと言う。

「最初はビーチバレーボールに取り組むことで足腰が鍛えられてインドアの駆け引きにも活かせると思っていた。けれど今は、ビーチでもしっかり勝ちたい。1年間練習して上までいける選手になりたい」と未来へ気持ちを向けた。

 

男子のU19アジア選手権において、決勝トーナメントに残れなかったのは今大会が初めてとなった。それでも白鳥氏の心は揺らがない。

「目先の勝利ではなく、今回経験した選手たちが継続して挑める環境、システムを作る。それが最大の目的です。強化の仕組み、土台をしっかり作らないとこれ以上結果を出していくことはできないですからまずは3年間目標に向かって取り組むこと。その結果を見て、環境やシステム自体はどうなのか、それともシステムはそのままで強化の内容を変えればいいのか。この先の取り組み方を決めることができるのではないかと思います」

 今回のアジアU19が真の強化起点となるのか、長い目で見守っていきたい。