アーバンスポーツのメッカで第3戦渋谷大会開幕!

アーバンスポーツのメッカで第3戦渋谷大会開幕!

マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2023の第3戦、渋谷大会が開幕した。会場となるのは、東京・渋谷区立宮下公園(通称:MIYASHITA PARK)。2020年に新しく生まれ変わった公園にはサンドコートが常設され、ビーチバレーボール、ビーチサッカーなどのファンが集まる。今や、東京の新名所である。MIYASHITA PARKでのマイナビジャパンツアー開催は、初。来年行われるパリオリンピックでは、ビーチバレーボールはエッフェル塔がランドマークになるエリアで開催される。今大会も同様の都市型大会として、注目が集まっている。

 

MIYASHITA PARKに設置されている1面のコートで試合は行われる。男女各8ペアが出場するシングルエリミネーションによるトーナメント方式で、1日目に1回戦、2日目は準決勝、決勝が順番に実施される予定だ。1コートのみであるため、観客は全ての試合をじっくり観戦できるのも、都市型会場の特徴と言えるだろう。

 

一方、ビルの屋上に設営されたコートでは、ボールが外に飛び出さないよう、天井部分にはネットが張られている。天井ネットに当たったボールが自陣コートに戻ってきた場合はそのままプレーを続行できるが、相手コートに落ちた場合はアウトとなる。また、ウォームアップ用のコートが用意されていない。試合開始前に必ず25分間のウォームアップ時間を確保することも、今大会の特徴となっている。こうしたプレー環境がいかに選手たちに影響するのか。それも、今大会の大きな見どころとなる。

 

 この時期としては異例の大型台風の影響により、東京都心は早朝から警戒レベル3という大雨に見舞われていたが、台風特有の強風はなくスケジュール通りに試合は行われることとなった。試合開始時刻の9時、気温は18度、北北東の風2m/s。時折強くなる雨と肌寒いコンディションの中、女子の酒井春海(株式会社甲斐組)/樫原美陽(一つ山ホールディングス株式会社)と、村上めぐみ/藤井桜子(ともに株式会社立飛ホールディングス)の1回戦が始まった。

 酒井/樫原は、今季初めて組んだフレッシュなペア。普段からとても気が合うと感じていたという2人の持ち味は、スピードを生かした粘り強いプレーだ。効果的なディフェンスとつなぎを発揮し、経験豊富な村上/藤井に立ち向かう。先制を許しリードされるも、相手のミスを引き出し、第1セットを21-16で勝ち取った。

 第2セットになると、藤井のスパイクが炸裂した。

スパイクを打つ藤井

 

「私の強みは強打。1セット目に拾われてしまったのは、中途半端だったからです。2セット目以降は、最初から持ち味を生かしていこうと積極的に打っていきました」(藤井)

 その言葉通りにスパイクでの得点を積み重ねて、第2セットは16-21で村上/藤井が奪取した。

 最終セットに入る頃、雨足は一気に強くなった。「シン(村上)さんは雨女だから、雨には慣れている」(藤井)と語る村上/藤井には雨に怯む姿はない。藤井の強打で先制点を挙げると、その勢いのまま15―9で村上/藤井が勝利した。

 

 続く第2試合は、本村嘉菜(アイビークリーン株式会社)/辻村りこ(ANAエアポートサービス株式会社)と松本恋/穏(ともにフリー)の対戦。松本姉妹はいずれも身長165cmながら跳躍力を生かしたスパイクやサーブを武器とする。身長177cm、173cmと長身の本村/辻村を相手に、姉妹ならではの連携による固い守備力から攻撃を展開し、第1セット、第2セットともに21-19で下してストレート勝ちした。

 

 第3試合、第4試合は男子の1回戦が行われる。11時30分の第3試合開始時間になると、雨が上がった。風は北東2m/s、気温は19度。激しい運動量を必要とする選手にとっては、絶好のコンディションである。

 石島雄介(トヨタ自動車株式会社)/髙橋巧(ANAあきんど株式会社)と西村晃一(WINDS)/上田翔貴(アクティブスタイル株式会社)との対戦では、石島が上田のスパイクをことごとくブロックし、ストレートで勝利。続く、庄司憲右(ハウスコム株式会社)/池田隼平(株式会社カブト)、古田史郎((DOTs)/黒川寛輝ディラン(しながわシティビーチバレーボールクラブ)の対戦では、フルセットの末15―13で庄司/池田ペアが勝利した。

池田/庄司ペア

 

 午後からは台風一過の青空が広がり、コートの周りには大勢の観客が詰めかけた。そんな中、翌日の準決勝に駒を進めたのは、前述の4チームのほか、女子の長谷川暁子(NTTコムウェア株式会社)/坂口由里香(トーヨーメタル株式会社)、山田紗也香/西堀健実(ともにトヨタ自動車株式会社)、男子は黒川魁/福嶋晃介(ともにNTTコムウェア株式会社)、長谷川徳海/倉坂正人(ともにフリー)。

 

 普段ビーチバレー会場では見かけないような観客も集まった初の都市型大会に、選手たちも特別の想いがあったようだ。渋谷からほど近い青山学院大学出身の長谷川暁子は「とてもワクワクしていました」と、開口一番語った。「パリのエッフェル塔など有名な観光地で大会が開催されることが世界でも主流になってきています。ビーチバレーの魅力を発信できる場所、新たに興味を持ってもらえるのではないかと思っています」(坂口由里香)。

 

 一方で、今大会の特徴であった天井ネットは、特に男子選手のプレーに大きな影響を与えた。

「ネットが低くその対応に一番気を使った。低いトスを上げざるを得ないので、それをどう打つか、また、相手の低いトスの攻撃にどう対応するか。その対応の精度が一番のポイントだった」(長谷川徳海)。

「天井ネットの低さを気にするためか、対戦相手がスパイクを打ちきれていない場面があった。だから、無理にブロックに跳ぶのではなく、フェイクを入れてから後ろに下がってレシーブする戦術が、この会場ではハマったという印象があります」(倉坂)。

両手を上げる倉坂

 

 明日行われる準決勝、決勝についても、この渋谷大会会場特有のコートの特性をどれだけ味方につけるかが、勝敗を分けるカギになりそうだ。

 

 第7試合後には、2025年東京で開催されるデフリンピックのPRトークセッションが行われた。参加者には東京オリンピックに出場した村上めぐみ、今年日本代表に初選出された黒川寛輝ディラン、ビーチバレーのレジェンドとして人気を博す西村晃一、さらにデフ日本代表選手から瀬井達也選手、竹村徳比古選手らが登場した。手話を使ったトークセッションでは普段の活動やコミュニケーションについて交流を深めた。

 また、最終試合終了後、東京グレートベアーズと富士通カワサキレッドスピリッツの選手たちによる4人制ビーチバレーのエキシビションマッチが行われ多くのファンが訪れた。20時近くになっても、コート周囲に集まった観客の声援が響いていた。

 

男子エキシビションマッチの東京グレートベアーズ/富士通カワサキレッドスピリッツ

 

 日曜日の明日、東京・渋谷は晴天の予報である。今日以上の観客がビーチバレーの迫力あるプレーに魅了されることだろう。