2022年を振り返る② 川合庶事業本部長

2022年を振り返る② 川合庶事業本部長

2022年もいよいよ大詰め。今年はマイナビジャパンビーチバレーボールツアー2022(以下マイナビジャパンツアー)の全7試合が有観客で開催され、以前のような風景を取り戻し始めた。また常連選手たちに加え、アクティオワイルドカードで出場した選手が存在感を発揮するなど、若い世代の強化のための取り組みが実を結ぶ場面も増えている。川合庶事業本部長にはマイナビジャパンツアーを中心に、今年の振り返りと来年に向けての見通しを聞いた。

 

──まずはマイナビジャパンツアーの今季を振り返って

川合 株式会社マイナビ様から昨年に引き続きジャパンツアーのご協賛をいただけたことは、大変ありがたいお話でした。川合俊一会長や私は改善するために入ってきたという面がありますので、まずは継続いただいたスポンサーの皆さまに対してよい大会になれるように頑張らなければいけないと思いました。ご協賛がなければ大会を大々的に行うことは難しいですし、賞金や海外選手の招致などに費用も大変難しいものとなります。なので、まずはご協賛いただけたことで大会を運営できると決まったことが何よりよかったです。

 

 

──今季はツアー常連選手に加えて若い選手の活躍もありました

川合 若い選手が活躍することは難しいと言われるジャパンツアーで、昨年始まったアクティオワイルドカード(有望な若い選手たちの強化を目的に、トップレベルを体感するために導入されたワイルドカード)で出場権を獲得した選手が活躍し、継続的に大会に出場するようになっています。福嶋晃介(NTTコムウェア)、小田涼太(ハウスコム)、上田翔貴(駒沢大)、山田紗也香(トヨタ自動車)、松本恋、松本穏(ともにフリー)、衣笠乃愛、菊地真結(ともに明海大)など、チャンスを与えられた選手たちが活躍する流れができたことは大きな収穫です。ほかの若手選手にとっても、「自分たちも活躍できるのではないか」という刺激になったと思うので、株式会社アクティオ様のご意向が非常に効果的でした。

 

アクティオワイルドカードで出場した衣笠/菊地(ともに明海大)組

 

──今季はツアーを有観客で行いました

川合 今年は有観客開催を決めて進めましたが、選手の抗原検査、選手や観客の導線の区別、試合ごとの消毒など、やはり準備は大変でした。ですが、第1戦立川立飛大会を見ても、観客がいることで選手はいつも以上に力を出すことができていたと思います。昨年のように選手だけでは競技会のようになってしまい、やはり今一つ盛り上がりに欠けるところがありました。ファンの皆さんが会場にいるということはとても大事なことなのだと改めて感じましたし、選手のレベルアップにもつながったのではないかと思います。

 

──有観客開催による問題点などはありましたか?

川合 有観客にしたことによる盗撮の問題がありました。

 

──マイナビジャパンビーチバレーボールツアーでは、スチールカメラ、ムービーカメラ(ビデオカメラ)の使用は一切禁止となっており、携帯電話での撮影のみ可能。また、カメラをズームしての撮影および周りの方に不信感を与えるような行為は禁止となっていますね

川合 新型コロナウイルスの発生以前、浅尾美和さんなど人気選手がいたころから、選手専用のトイレを用意するなどさまざまな対策を行なっていました。現在も継続的に対策していますが、第1戦立川立飛大会後に、これまで水着で出席していた表彰式用に、チャンピオンTシャツ、大会Tシャツを製作してそれを着用してもらうなど新たに盗撮対策を実施しました。JOC(日本オリンピック委員会)が「アスリートへの写真・動画による性的ハラスメント防止の取り組み」を行っていますが、こういった問題がもっとも多いのは陸上競技やビーチバレーボールだと言われています。JOC、日本陸上競技連盟とも情報交換を行い、陸上競技で行われている対策を取り入れ、会場には通報サイトにアクセスできるQRコードの入ったポスターを貼るようしました。すべては選手を守るためであり、安心して競技ができる環境を私たちが作らなければいけません。また、チャンピオンTシャツに併せてチャンピオンキャップも製作しました。アーバンスポーツと言われるビーチバレーボールはスタイリッシュであることも強みの一つですので、こういった機会にプラスになる面も作ることができました。

 

盗撮対策も兼ねて表彰式で大会TシャツやチャンピオンTシャツを着用

 

──そのほかに取り組んだことはありますか?

川合 以前から行なっていたビーチクリーンアップ、ビーチバレーボール教室などでの環境問題へのアプローチや地域貢献活動などを、選手会発信で行って欲しいとお願いをしました。選手にとっては練習後、試合後で疲れているタイミングでの活動にはなりますが、子どもたちにビーチバレーボールに接してもらい、選手が直接競技の魅力を伝えることがもっとも効果的です。大会で日本各地に行き、会場を使わせていただくので、ビーチやその周辺をきれいにして帰り、地域の子どもたちに夢や希望を与えるような活動ができればと思い、選手会にお願いしましたが、一生懸命にやっていただいており、ありがたく感じています。

 

選手会によるビーチバレーボールクリニックや清掃活動も行われた

 

──事業本部長就任初年度で難しいところはありましたか?

川合 私が2022年4月に就任したタイミングは、すでに大会などについても大まかなことが決定しており、スポンサー各社の皆さまにも説明したあとのことでした。そのタイミングでさまざまなことを大きく変えると混乱を招くので、すべて変えるわけにはいかない難しさがありました。しかし、変えられる部分は変えていきながら、次年度に向けてよくしていくという視点を持ってやらせていただきました。

 

──今後どういった部分を変えていきたいですか?

川合 まずは大会の開催時期についてです。今季は全7大会を行いましたが、5月と7月に1大会ずつ開催したほかは、5大会が9月、10月に集中してしまいました。これは就任時にはすでに決まっていたことで、変えるわけにはいきませんでしたが、次年度はシーズンを長く使って大会を分散した形に変えていきたいと思います。そして海岸での開催だけではなく、人目につきやすく、多くの方に見ていただける都市部での開催を目指しています。

 

また、社会貢献活動も増やしていきたいです。大会収益の一部を難病で苦しむ子どものため寄付する、もしくは大会を行った地域に寄付するような取り組みを考えています。また環境問題についても取り組みたいと考えています。選手用に飲料水を用意していますが、大会ごとにペットボトルゴミが大量に発生します。また飲みかけのペットボトルを捨てて、廃棄する水が大量になることもあります。ウォーターサーバーを置いて、選手が必要な量の水をマイボトルに入れてもらう、などの方策を検討しています。また会場にはゴミ箱を設けず、代わりにオシャレなゴミバックを製作して配布し、ゴミを自分で持ち帰ってもらうことも計画中です。

 

──環境負荷の低減を意図してできることはたくさんありそうですね

川合 そうですね。例えばコートに撒く水の量もかなりのものです。水撒きは必要なことですが、暑い時期は涼しい場所で開催できれば、その量を減らすことができるかもしれません。あとはユニフォームについて。現在大会ごとに、ユニフォームを配布しています。対戦時に同じ色にならないようにするため、という側面はありますが、もっと環境に配慮するならば変える必要があると考えています。ビーチバレーボールという競技が、どれだけ社会や地域に貢献しているのか。競技の魅力だけでなく、そういったものもないと応援してもらえない時代です。また選手から「もっとこういったことをやりましょう」とアイデアを言ってくれることもあります。そういった提案をなるべく実行できるように私たちも準備して、競技団体と選手が一緒になって考えなければ衰退していくと思いますし、ふだんからその意識を持つことが大切だと思います。

 

──川合俊一会長が就任したことによる変化はありますか?

川合 元々ビーチバレーボール連盟の会長だったので、ビーチバレーボールに対する情熱は持っていると思います。またその熱意が協会全体に伝わって、いろいろな部署が応援してくれていると感じています。

 

第6戦松山大会では川合会長と平野ノラさんのトークショーを開催

 

──最後に、ビーチバレーボールが将来どのようになっていって欲しいですか?

川合 競技として応援されるために強くなければいけないと思います。そのためにもまずは勝てる日本のチームを作らなければいけません。人気選手が出ても、その方がいなくなると人気もなくなってしまうことが過去にはありました。そういった点でまずは競技として勝てる選手を輩出することが一番の目標です。それとともに、ビーチバレーボールの魅力を発信して、より注目を浴びられるような大会作りを行なっていきたいです。

 

川合庶事業本部長