石井美樹&村上めぐみペア対談 いろいろ経験して怖さを知った上で勝てれば『本物』

石井美樹&村上めぐみペア対談
いろいろ経験して怖さを知った上で
勝てれば『本物』

2015年からペアを組み、リオデジャネイロ五輪の予選を戦った村上めぐみ(株式会社オーイング)組と石井美樹(湘南ベルマーレ)。一度は別れたものの昨年、再びチームを結成。決して体格に恵まれているわけではない2人だが、国内ツアーチャンピオンに2シーズンに渡り君臨し、新たな目標へ向かい戦場を海外へ求めていく。

 

──チームを再結成し、ワールドツアーを中心に戦い始めましたが、今シーズンに入っていかがですか?

村上:ここまでワールドツアーの本戦へ進めないことも多く、オランダ・ハーグ大会(4スター)も結果は悪くはなかったのですが(9位タイ)、内容がすごくよかったわけではありませんでした。それでも結果につながったことは、チームがさらによくなる兆しだと思っています。自分たちの中でよかった頃のイメージはあるのですが、そこに戻ろうとするとうまくいきません。サポートのメンバーや環境も変わっているので、新しくチームを作る意識でやっていますね、昔と比べるわけではなくて。

石井:成長していくスピードは昔の方が速かったよね、上がるしかなかったから。

村上:そう。上がるしかなかったし、それほど他のチームに知られてなかったから、対応されなかったしね。今の方が成長するスピードは遅いのかもしれないけど、2人で話したり考えたりすることは増えているので、チームはより深いところへ達していると思います。

──以前組んでいた時(2016年シーズン)とはちょっと違うチームになっているということでしょうか?

村上:目標などは一緒なんですけど、経験を積んだ分、いろんなことを知って、いろんな感情が沸いてくる。今は、自分の気持ちの在り方について、よく考えますね。

石井:海外の試合に出て分かったことがたくさんあります。海外の方がいろんなことを学べるから、壁があってもそれを乗り越えようと気持ちが生まれてきますね。

村上:2016年はリオデジャネイロオリンピック予選にあたるコンチネンタルカップという明確な目標があって、それに向かって出場する大会や練習、意識、すべてを組み立てました。最後は負けてオリンピックへは行けなかったんですけど、すべてを出し切ったからこそ得られたものがありました。その時とはちょっと違うと思いますね。チームは長いですけど、いつも同じではなく新しいことばかりです。

 


ジャパンツアー開幕戦、第3戦で優勝した石井/村上組

 

──2人はワールドツアーを回ってワールドランキング15位以内に与えられる東京五輪出場権を狙っています

石井:今は出るならそれしか考えていません。

村上:戦うベースが海外になっています。実は2016年、ワールドツアーもほぼ出ていないんです。だからワールドツアーの連戦や、国内の試合に出て、移動してそのままツアーに出るという経験も初めてだったりします。今まではすべて全力でぶつかっていったのですが、先を見てポイントを考えると出る大会を選んで、そこに集中して結果を出すということも必要かなと思っています。それにツアーで友達は増えたよね?

石井:みんな、挨拶してくれるようになった。以前は海外のチームに合同練習を頼んでも、小さいしナメられているのか(笑)断られることが多かったんですけど、最近は一緒にやろうよと声をかけられることも増えました。

村上:ワールドツアーのメンバーになれたと思います(笑)。お互いを知った上で勝っていくというのも重要ですよね。

──小さな2人のペアでワールドツアーを戦えている要因はなんでしょうか?

村上:やっぱりサーブとディフェンスでしょうね。

石井:海外のチームと比較すると攻撃力が高いわけではないので、つないで長いラリーの展開にして点を取っていかないと勝てない。その経験はたくさん持っていると思います。

村上:あとは競った時の気持ちの持ち方とか、試合の雰囲気の感じ方も変わってきたよね。

石井:2016年にアメリカ・ロングビーチ(グランドスラム、現在の5スターに相当)で初めて準々決勝までいった時は、浮き足立って焦って、どうしよう、どうしようってなった(笑)。でもその雰囲気を一度経験したから、試合の中で焦ることも少なくなったと思う。相手に点差で離されても、これは『イケる』と思えるようになってきました。

──海外のチームと戦う上でフィジカルも重要だと思いますが。

村上:やっぱり小さいので、ディグで手を伸ばしても他の選手よりボール2個分ぐらい届かない。それを経験で埋めるのは難しい部分もあります。経験でいえば、世界にはもっとトップの選手がいます。だから、自分のコンディションはベストで持っていきたい。全力でやるのが自分のスタイルなのですが、今はそのスタイルも改革中です。最後まで戦いぬけるフィジカルとメンタルの力は必要だと感じています。

石井:私、スタミナはないですよね?

村上:(石井)美樹ちゃんは力の使い方と相手に対しての分析力が高い。無駄なく効率よく動くから、スピードも出るし体力も浪費しない。動ける分、運動量が多いよね。あと大切なのは連戦でのコンディションの作り方。私たちは時間をかけてコンディションを上げていくことに慣れていたので、タイトなスケジュールも新しい経験ですね。その中でよいパフォーマンスを出し切るということも課題です。

 


今シーズンでペア結成4年目を迎えた

 

──2年後、東京五輪もありますが、今シーズンはどこに目標を置いてプレーしていきますか?

村上:ワールドツアーの5、4スターの大会でのベスト8。プラス、国内ツアーファイナルのグランフロント大阪大会で勝ってツアー3連覇できるように。今年は経験の年だと思っています。うまくいかない中でもどう試合で結果を出していくかとか、次に生かせる経験を重ねて、2年後につなげたいと思います。

石井:目標を達成するために、出場できる大会でベストを出し切って、何が必要か、もっと考えていかないといけないと思っています。昔はよくミーティングをして考え方を共有したのですが、年数が経つにつれてそれも減ってきています。2人でもっと話し合って準備できたら、自分たちではなく対戦相手にフォーカスして戦えると思います。結果もそうですが、そういったところからチームでもっと詰めていきたいですね。

村上:長く組んでいると、美樹ちゃんもわかっているだろうで進んでしまうことが増えて、その2人のちょっとしたズレが1点、2点に効いてくるんです。だからやっぱり細かいところまで2人で共有した方がいい。それに気づいたのも経験です。よいことも悪いことも経験していくといろいろな怖さが出てくるけど、その怖さを知った上で勝てれば、『本物』だと思っています。