地元の声援と期待を背負う戦い。「福井しあわせ元気国体2018」最終日

地元の声援と期待を背負う戦い。
「福井しあわせ元気国体2018」最終日

ビーチバレーボールが正式競技となって第2回目の国民体育大会となる「福井しあわせ元気国体2018」が9月9日(日)から11日(火)、福井県小浜市・若狭鯉川シーサイドパーク特設会場にて開催された。各ブロック予選を勝ち抜いてきた男女16チームが出場し、AからDまでの予選グループを戦い、上位2チームが決勝トーナメントに進出。9、10日は電車が運休になるほどの大雨に見舞われたが、最終日は天候も回復し滞りなく、準決勝、3位決定戦、決勝が行われた。

1997年大阪国体から公開競技またはデモンストレーション競技として導入されて以来、ビーチバレーボールは「成年」「少年」の区分けなく開催されてきたが、今大会を最後に2019年茨城国体から「少年」種目の開催となる。各都道府県代表は、それぞれの想いを背負って挑んだ。

女子決勝は、地元・福井(村上めぐみ/幅口絵里香)と神奈川(石坪聖野/柴麻美)の対戦となった。
福井は、準決勝で東京(沢目繭/坂本実優)をギリギリのところで振り切っての決勝進出。5年ほど前、地元の企業・株式会社オーイングが福井国体で優勝を成し遂げるために召集された村上と幅口は、「この舞台で優勝することだけを考えてやってきた」と最後の舞台までたどり着いた。


女子優勝の神奈川。「アウェイでも楽しめるのが、私たちの強み」(柴)

第1セットは速いテンポのパス回しを得意とする神奈川のワン攻撃などに翻弄されながらも、福井が最後抜け出し、21-18と先取。メインコートを取り囲んだスティックバルーンを持った大応援団のボルテージも最高潮へ。

しかし、第2セットは情勢が変わった。石坪が足を負傷し11-11でインジュリータイムアウト。「それまでピリピリしてプレーしていたけれど、タイム明けから切り替えることができた」(石坪)と神奈川の堅いディフェンスを前にして、福井は決定打を欠き、流れを引き寄せられない。「神奈川は長年ペアを組んでいて、チームとして点の取りにきていた。自分たちも点の取り方をもっと考えていければよかった」と村上。第2セットは神奈川が21-18と奪い返し、勝負の行方はフルセットに持ち込まれた。

最終セット。幅口が「自分たちの体力を踏まえた上2セット目で勝負をつけなければいけなかった」と振り返ったように、終盤福井は幅口が両足をつり、インジュリータイムアウトをとる。「それも踏まえて、自分たちの実力が足りなかった」(幅口)と大応援団の声援も及ばず、15-8と神奈川が勝利した。


男子決勝、愛媛vs千葉

男子決勝は、昨年愛媛国体で地元に錦を飾った愛媛(長谷川徳海/庄司憲右)と千葉(上場雄也/柴田大助)の顔合わせとなった。
試合序盤は、高さとパワーがぶつかり合う空中戦。ネットから離れた位置からでも強打を打ちぬいていた千葉が先行するが、「国体ならではのルールを活用して楠原(千秋)監督に積極的にスカウティングしてもらうようお願いした」と長谷川。千葉の攻撃に少しずつ対応し始めた愛媛が第1セット21-17と先取した。

第2セットは終盤まで両者一歩も引かない攻防戦が繰り広げられるが、「最後も作戦が的中した。相手に対して深いサーブを打って、ブロックポイント、ディグを成功させて決着をつけることができた」(長谷川)。愛媛が最後連続得点に成功し22-20と勝負を決めた。
2連覇を達成した長谷川は、「グループ戦初戦の福井戦が決勝戦だと思って臨んだ。海外の会場をはるかに超えるほど応援がすごく一番苦しかった試合で、勝ち切れたことが大きかった。その反面、昨年の地元の応援がどんなにありがたかったか身にしみた」と大会を振り返った。


準優勝に終わった福井

1997年大阪国体から公開競技またはデモンストレーション競技として開催され、2017年より正式競技化された国体。昨年地元の愛媛国体で優勝を成し遂げた庄司は「普段の国内ツアーとは背負うものが違う」と言う。

各都道府県は各競技に強化予算を分配し、総合優勝を目指す。いわば、代表選手たちは都道府県の看板を背負って挑むことになる。地元開催となれば、その期待は倍増だろう。今回の国体では、福井県は国体開催地として鯉川シーサイドパークを創設。地元企業の株式会社オーイングが福井出身の選手をサポートし、ビーチバレーボールチームを結成させた。

これまでの活動を『優勝』という二文字で表せなかった村上は試合後、地元メディアの取材中に涙をこらえきれなかった。「国体は近くにいる人の想いがより伝わってくる。国の代表としても、県を代表しても、そこは同じでやっぱり応援してくれる方々へ結果を出して返したい。そういう想いで活動している。自分たちの力を出し切ったので悔いはないけれど、失敗してしまった」と心境を絞り出した。


表彰式での入賞チーム

村上の横でひたすら気丈に振舞っていた幅口は、「今後は少年種目が導入されるので、今回大会のお手伝いをしてくれた中高生たちにビーチバレーボールの魅力は伝えられたと思う。これをきっかけに若い世代がビーチバレーボールにふれあって、小浜を中心に福井が元気になっていったら、と。自分も福井の人間として戦っているということを出していけるように行動していきたい」。

男子の長谷川も未来に視線を向けている。「僕たちの結果が、少年種目につながっていくことがベスト。ビーチバレーボールは、自分たちで考えてプレーする競技。インドアも含めて子どもたちがベスト取り組むことでタフさを身に付けることができると思うし、それが社会に出て活躍できる人間になるきっかけになると思う」と語った。

出場チーム&結果詳細